更新年月日・2015年11月16日




一つの経験から

2学期が始まって2か月が過ぎ、大きな行事の学習発表会も終わり、高等部はそれぞれの目標を持って取り組んだ現場実習も終わりました。小学部、中学部は修学旅行も晴天のうちに終わり、宿泊学習や遠足などを経験して一回り成長したのではないでしょうか。

私は十数年前に43歳の時、自己啓発研修で1年休職してドイツへ美術留学しました。先輩の関係でミュンヘン美術大学に行きました。まず、語学校へ入学したのですが、頼りの先輩が急用で帰国したので、一人で不安のまま、初日を迎えました。大教室に入るとドイツ語表記されたアンケートのようなものが配られました。私には何が書いてあるか分からないので、手を上げました。先生がやってきてドイツ語で何か言われたのですが、私がジェスチャーで分からないと答えると大きな声で出口を指さし「出ろ!」と言っているようでした。私は「何故自分が出されるのか」とパニックになり、入学したことを証明しようと、カバンから入学金の領収書を出したりして、抵抗しました。先生は住所らしきものを書いて私に見せました。私は「何処だろう」とカバンから地図を広げ見せました。先生はとうとう私を廊下へ出し、窓から見える赤い屋根の建物を指さして、教室に戻ってしまいました。廊下に残された混乱した私はとりあえず、その赤い屋根の建物へ行きました。日本人らしい女性がいたので「日本人ですか」と聞くと「はい」と返ってきました。ほっとした私が事情を話すと「今日はクラス分けの日だから初心者はテストを受けなくてもいいよ。この建物が1ゼミのクラスなので、明日からくればいいよ」と。やっと自分の置かれている状況が理解できほっとしました。自分の置かれている状況が全くわからない不安感の怖さを実感した経験でした。子ども達一人ひとりが自分の置かれている状況を理解できるようにすること、安心して過ごせるための支援の手だてを用意することの大切さを痛感させられました。

神奈川県もインクルーシブな学校づくりを進めるために「インクルーシブ教育推進課」を創設し、動き始めました。「合理的配慮」について様々な角度から考えていかなければならない時代を迎えています。私が一つの経験から得た子どもの不安を取り除くための手だてが、みんなと一緒に安心して学べる環境づくりへつながるという実感を「合理的配慮」の一つとして活かしていきたいと思っています。

                                         (教頭  田中太賀志)

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